セミナー#03 本田由紀×芹沢一也「〈若者〉をめぐる現在」
日時 2007年6月2日(土) 14時~17時
講師 本田由紀×芹沢一也
タイトル 「〈若者〉をめぐる現在」
格差社会やネットカフェ難民などといった言葉がメディアを騒がしている。日本社会に急速に広がりつつある貧困、あるいは確実性と安定を失っていく未来、その渦中にあって時代に翻弄されているのは若者たちである。今回のセミナーはニート問題や雇用問題におけるアクチュアルな発言で、広く注目を集めている教育社会学者の本田由紀氏をお招きする。現在、若者たちをめぐって一体どのような事態が生じているのか、これまで若者をめぐって語られてきた言説(若者論)を踏まえて話し合ってみたい。
セミナー概要
冷戦構造の崩壊後、グローバル経済競争が苛烈化し、国家間の勢力地図も描き変わった。日本という国家も第二次大戦後、固有の履歴の中で獲得してきた経済的繁栄と国家的アイデンティティの揺らぎに直面している。そうした大きな構造変動の影響は、社会への新規参入者である若者にもっとも顕著に表れている。若者は従来、家族に支えられて学校教育を通過し、企業の雇用に支えられて新たな家族を形成するという循環の中で、いびつさをはらみながらも一定の安定的な「大人への移行」を遂げてきた。だがそれらの保障はいまや不確実化ないし格差化した。その結果、個々の若者が置かれることになった状況の差異は「人間力」の多寡という個人要因によって説明され、利用価値があるとみなされる場合は極限までエネルギーを動員され、ないとみなされる場合は厳しい排除がなされる。政府は公的な保障を補強する責任を回避したままで、学校と家族へのしめつけを媒介にした若者の管理と統制に際限なく傾斜しつつある。こうした状況に抗い、若者が自らの尊厳と自由を守るすべはあるのか。このような現状認識と必要かつ可能な戦略について考えたい。
本田由紀(ほんだ・ゆき) 1964年徳島県生まれ。東京大学大学院教育学研究科准教授。若年労働市場や教育意識に関する実証研究を専門とし、「ニート」「人間力」「家庭教育」などの概念に批判的検討を加えている。著書に『若者の労働と生活世界』(編著、大月書店、2007年5月)、『「ニート」って言うな!』(光文社、2006年)、『多元化する「能力」と日本社会 ―ハイパー・メリトクラシー化のなかで』(NTT出版、2005年、大佛次郎論壇賞奨励賞受賞)などがある。
